なぜ今、Elastic Observabilityが必要なのか ー ビジネスを“止まらせない”ために
日々のビジネスにおいて、ITシステムが果たす役割はますます大きくなっています。Webサイト、基幹システム、SaaSツール…これらが少しでも止まったり、遅くなったりすると、ビジネスに甚大な影響が出てしまいます。
かつては、「システムが動いているかどうか」だけを監視していれば十分でした。しかし、現代のITシステムは、クラウド化、マイクロサービス化、コンテナ化といった技術の進化により、非常に複雑化しています。
このような複雑なシステムにおいて、「なぜ今、Elastic Observabilityが必要なのか?」、その理由を3つのポイントでご説明します。
1. 「なぜか遅い」「なぜかエラーが出る」が“わからない”では済まされない時代になったから
現代のITシステムは、単一の大きなプログラムではなく、多くの小さなサービス(マイクロサービス)が連携して動いています。あるサービスが遅延すると、それが他のサービスに波及し、最終的にユーザーに影響が出ることが多々あります。
従来の監視ツールでは、「サーバーのCPU使用率が上がっている」といった“点”の情報しか見えませんでした。しかし、それでは「なぜCPUが上がったのか?」「どのサービスのせいで遅くなっているのか?」といった根本原因を特定するのに膨大な時間がかかってしまいます。
Elastic Observabilityは、システムが出力するログ、パフォーマンスデータ(メトリクス)、ユーザーの操作経路(トレース)という3つの情報を統合的に分析することで、「なぜ」問題が起きているのかを瞬時に特定することを可能にします。これにより、問題を迅速に解決し、ビジネスの停止時間を最小限に抑えることができるのです。
2. ユーザー体験(UX)の重要性が高まっているから
顧客は、Webサイトの表示が少しでも遅ければすぐに離脱し、アプリケーションが不安定であればすぐに別のサービスに乗り換えてしまいます。現代のビジネスにおいて、快適なユーザー体験の提供は、顧客を獲得し、維持するための生命線となっています。
しかし、システムが複雑だと、「どこの処理が遅いのか?」「どの地域からのアクセスでエラーが多いのか?」といった、ユーザー体験に直結する課題を見つけ出すのが非常に困難です。
Elastic Observabilityは、ユーザーのアクセスからシステム内部の処理までを“一連の流れ”として可視化します。これにより、「この機能を使うと特定のAPI呼び出しで時間がかかっている」といった具体的な課題を特定し、ユーザーが気づく前に改善策を講じることが可能になります。結果として、顧客満足度を向上させ、競合との差別化を図ることができます。
3. IT運用の負担が増大し、人手不足が深刻化しているから
複雑化したシステムの監視・運用は、IT運用チームに大きな負担をかけています。24時間365日、大量のアラートに追われ、手作業での調査や切り分けに多くの時間を費やしている、という声も少なくありません。この負担は、IT人材不足が叫ばれる現代において、さらに深刻な問題となっています。
Elastic Observabilityは、散在する情報を一元化し、相関分析を自動化することで、IT運用チームの業務効率を劇的に改善します。問題発生時の原因特定を自動化・迅速化することで、運用チームはより戦略的な業務に集中できるようになります。これにより、限られたITリソースを最大限に活用し、働き方改革にも貢献できるのです。
Elastic Observabilityの3つの柱と特徴
Elastic Observabilityはログやメトリック、監視データなどを一元的に管理することで、あらゆる事象の原因を的確に把握させてくれる監視ソリューションです。システム監視のためのデータを集約してデータのサイロ化を排除し、探索と分析を一元化。それによりスマートな検知と迅速な解決を実現します。
Observabilityの3つの柱
常時発生するログ、メトリクス、トレースデータをリアルタイムで監視し、システムの完全な可視性を確保。問題の原因を迅速に特定して対応が可能になります。
これら3つのデータ要素は、ElasticStackにおけるBeats、APM Agentがデータを収集してElasticsearchに送信し、蓄積されていきます。

ログ
システムの動作、トランザクション、エラー、警告、その他の重要なイベントに関する情報が含まれている詳細な記録のこと。システムの状態や挙動を理解し、問題の診断やデバッグ、パフォーマンスの最適化、セキュリティの監視、コンプライアンスのチェックなどを行う際に重要な役割を果たします。ログは、データを時系列に記録するため、何がいつ起こったかを追跡しやすくなります。
メトリクス
システムやアプリケーションのパフォーマンス、健全性、利用状況を測定するための定量的なデータで、数値で表され、システムのさまざまな側面を監視・評価するために使用されます。
システムの健全性をリアルタイムで監視し、異常やパフォーマンスの問題を早期に検出するために重要とされています。
トレース
分散システムを通じて一連のリクエストやトランザクションが進行する経路を追跡し、可視化するための技術やデータ。トレースは、複雑なシステム内での個々のリクエストの流れを理解し、問題の診断やパフォーマンスの最適化に役立ちます。
Elastic Observabilityの特徴

クラウドインフラの監視
Elastic Cloudを使って、AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドインフラのリソース使用状況やパフォーマンスをリアルタイムで監視し、メトリクスやログデータを集約します。
詳細:Elastic Cloudの自動スケーリング機能により、リソースの使用状況に応じて柔軟に対応できるため、クラウド環境のモニタリングが効率化されます。

アプリケーションパフォーマンスモニタリング
Elastic Cloudのアプリケーションパフォーマンスモニタリング(APM)機能を利用して、アプリケーションのリクエストフローを追跡し、遅延やエラーを特定します。パフォーマンスのボトルネックを迅速に発見し、改善策を講じます。
詳細:Elastic Cloudでは、APMデータの収集と分析が自動化され、迅速にスケールアウトが可能なため、アプリケーションの可観測性が向上します。

マイクロサービスのモニタリング
KubernetesやDockerなどのマイクロサービスアーキテクチャをElastic Cloudで監視。各サービスのパフォーマンスや障害をリアルタイムで監視し、トレースデータを可視化します。
詳細:Elastic CloudのObservability機能により、複数のサービス間のトレースや依存関係を簡単に管理でき、障害時の原因追跡が容易になります。