2026年9月16日、Elastic Cloud Serverless の Cross-Project Search(CPS:クロスプロジェクト検索) が正式提供(GA)になりました。
CPS を使うと、複数の Serverless プロジェクトをリンクできます。データを1か所に集約することなく、複数のプロジェクトを横断して検索できる機能です。
Cross-Project Search の利点
Elastic Cloud Serverless では、用途、組織、リージョンなどに応じて環境を複数の「プロジェクト」に分けます。たとえば、次のような構成です。
- 東京と海外リージョンでデータを分ける
- 顧客や部門ごとに Security プロジェクトを分離する
- 本番環境とステージング環境を分ける
環境を分ければ分離は保てます。しかし複数のプロジェクトをまとめて調査したいという場面では、それぞれのプロジェクトを個別に確認する必要がありました。CPS は、この課題を解決します。
設定はシンプル
CPS は、Elastic Cloud の画面からプロジェクトをリンクして利用します。従来の Cross-Cluster Search(CCS)のように、接続先ごとの証明書やリモートクラスターを個別に設定する必要はありません。
Cloudのホーム画面 → OriginにしたいProjectの Manageを選択します。

左サイドバーの ServerlessからCross-project searchをクリックし、Get started with cross-project search画面からLink projectsをクリックします。

リンクできる一覧が表示されますので選択したいプロジェクトのボックスにチェックを入れます。リンク後は、Discover、ES|QL、Dashboard、Alerting などから Linked Project のデータを検索できます。
仕組み:Origin Project と Linked Project
CPS では、1つの Origin Project(起点となるプロジェクト) から、複数の Linked Project を検索します。
リンクできるのは、同じ Elastic Cloud Organization 内の Serverless プロジェクトです。プロジェクト自体は、異なるリージョンやクラウドプロバイダーに配置されていても構いません。
この仕組みによって、データの配置や環境の分離を維持したまま、必要なときだけ横断して検索できます。
GA で特に注目したいポイント
今回の GA では、1つの Origin Project から標準で最大 100 の Linked Project を扱えるようになりました。
また、既存の Serverless プロジェクトを Origin Project として利用できます。機械学習と Agent Builder も Cross-Project Search に対応しました。
特に Agent Builder では、AI Agent が1つのプロジェクトだけを見るのではなく、複数の Serverless プロジェクトから必要なコンテキストを取得する構成が可能になります。たとえば、地域や部門ごとにログを別プロジェクトへ保存しながら、中央の AI Agent から横断的に調査する、といった使い方が考えられます。
Security では Central SOC の構成が可能に
Security では、中央の Origin Project に Detection Rule を置き、複数の Linked Project にあるデータを対象として検知する構成が可能です。リージョンや組織ごとに Security プロジェクトを分離しながら、中央の SOC から横断的に監視・調査できます。
一方で、現時点ではすべての Security 機能が完全に横断化されるわけではありません。Linked Project 側の Detection Rule が独自に生成したアラートは、Origin Project の Alerts 画面には表示されません。Attack Discovery も、Origin Project で生成されたアラートを対象とします。
そのため Central SOC や MSSP のような構成では、どこでデータを保持するかだけでなく、どのプロジェクトで Detection Rule を実行し、アラートを生成するかまで含めた設計が重要になります。
Origin Project は専用に作るのがおすすめ
GA では、既存の Serverless プロジェクトを Origin Project として利用できるようになりました。ただし Elastic の公式ドキュメントでは、多くの構成で新しい空の Overview Project を作り、そこを Origin Project として利用する Hub-and-Spoke 型の構成が推奨されています。
理由は、稼働中のプロジェクトを Origin にすると、そのプロジェクトですでに利用している Dashboard や Alerting Rule などが、Linked Project のデータまで対象にする可能性があるためです。特に Detection Rule では、意図していなかったデータまで評価されることで、誤検知が増える可能性があります。

複数プロジェクトを横断するための専用プロジェクトを用意する、と考えるとイメージしやすいでしょう。
日本で利用する場合
2026年9月時点で、Elastic Cloud Serverless では AWS の東京リージョン(ap-northeast-1)と GCP の東京リージョン(asia-northeast1)を利用できます。Microsoft Azure の Serverless については、現時点の提供リージョン一覧に日本リージョンは含まれていません。
また、Observability と Security のプロジェクトで Cross-Project Search を利用する場合は、Complete tier が必要です。
まとめ
Cross-Project Search のポイントは、「環境は分けたまま、必要なときだけ横断して検索できる」ことです。
リージョン、組織、顧客などの理由で Serverless プロジェクトを分離しながら、中央の SOC や Observability 環境、AI Agent から複数プロジェクトのデータを横断して利用できます。
Central SOC、複数リージョンの Observability 環境、分散したデータを参照する AI Agent を設計する際に、押さえておきたい Elastic Cloud Serverless の機能です。
参考資料
本記事では、Cross-Project Search の概要と、設計時に特に押さえておきたいポイントに絞って紹介しました。対応機能の詳細、設定手順、プロジェクトルーティング、アクセス制御、API、料金体系などについては、以下の Elastic 公式情報をご確認ください。
- Elastic 公式ブログ「Elastic announces GA of cross-project search on Serverless」
GA で追加された機能や主なユースケース、料金の概要を確認できます。
https://www.elastic.co/blog/cross-project-search-elastic-serverless-ga - Elastic 公式ドキュメント:Cross-Project Search の設定
Origin Project / Linked Project の構成、Security での制約、推奨アーキテクチャ、権限設定など、実際に利用する際の詳細を確認できます。
https://www.elastic.co/docs/deploy-manage/cross-project-search-config - Elastic Cloud Serverless の提供リージョン
AWS、Google Cloud、Microsoft Azure で利用可能な Serverless リージョンの最新情報を確認できます。
https://www.elastic.co/docs/deploy-manage/deploy/elastic-cloud/regions

